
スポーツ中や日常生活での転倒など、急に足首や手首をひねってしまう捻挫は、誰にでも起こりうる怪我です。
しかし、単なる打撲と軽視して誤った対処をしてしまうと、症状を悪化させたり、回復を遅らせたりする原因になりかねません。
捻挫の直後は、良かれと思って取った行動が裏目に出ることも珍しくありません。
そこで、この記事では、捻挫をした際に絶対にやってはいけない行動と、症状の悪化を防ぐための正しい応急処置について詳しく解説します。
捻挫の症状を悪化させる!避けるべき7つの行動

捻挫をした直後は、その後の回復を左右する非常に重要な時期です。
この時期に適切な対応ができるかどうかで、治癒までの期間が大きく変わってきます。
しかし、痛みや腫れを早く治したい一心で取る行動の中には、かえって症状を悪化させてしまうものが含まれているため、注意が必要です。
まずは、捻挫の際に特に避けるべき7つの行動を具体的に挙げ、なぜ良くないのかを解説します。
痛みを我慢して歩いたり動かしたりする
捻挫は関節の靭帯が傷ついている状態であり、痛みは体からの危険信号です。
この痛みを我慢して無理に動かすと、損傷した靭帯がさらに傷つき、状態が悪化する可能性があります。
特に、体重がかかる足首の捻挫で無理に歩くと、内出血や腫れがひどくなるだけでなく、関節の不安定性を増大させるため、十分に注意が必要となるでしょう。
なお、どのくらい動けるかで重症度を自己判断するのは非常に危険です。
靭帯の損傷がひどくなると、治癒が遅れるばかりか、将来的に関節が緩くなり捻挫を繰り返す原因にもなり得ます。
そのため、受傷直後は、まず患部を動かさず安静にすることが最も重要といえるのではないでしょうか。
良かれと思って患部をマッサージする
痛みがある部分を揉みほぐしたくなるかもしれませんが、捻挫の急性期に患部をマッサージするのは絶対に避けるべきです。
捻挫した直後の患部は、内部で炎症や内出血が起きています。
この状態でマッサージによる刺激を加えると、その傷ついた血管からさらに血液が流れ出し、内出血と腫れを助長してしまいます。
炎症反応も強まり、結果として痛みが増すことになりかねません。
血行を良くするマッサージは、慢性的な肩こりなどには有効な場合もありますが、急性の怪我に対しては逆効果です。
患部の修復を妨げ、回復を大幅に遅らせる原因となるため、安静を保ってください。
血行が良くなるアルコールの摂取
怪我をした際の飲酒は、症状を悪化させる要因の一つです。
アルコールには血管を拡張させ、全身の血流を促進する作用があります。
捻挫で炎症を起こしている患部において血行が良くなると、炎症物質がその部分に集まりやすくなり、痛みや腫れ、熱感といった炎症反応が著しく増強されます。
また、アルコールの作用で一時的に痛みが麻痺することがあり、治ったと勘違いして患部を動かしてしまう危険も伴います。
これにより、さらなる損傷を招く可能性も否定できません。
捻挫の症状が落ち着くまでは、アルコールの摂取は控えましょう。
湯船に浸かるなどして温める行為
入浴で体を温めることはリラックスにつながりますが、捻挫をした直後に行うべきではありません。
患部を温めると血管が拡張され、血流が増加します。
これはアルコール摂取と同様に、炎症を起こしている部位の腫れや内出血を悪化させる原因となります。
捻挫の急性期、すなわち受傷後およそ48時間から72時間の間は、炎症を抑えるために冷やすのが基本です。
もし入浴が必要な場合は、湯船に浸かるのは避け、患部を濡らしたり温めたりしないように注意しながら、シャワーで手早く済ませるようにしてください。
温めるケアは炎症が治まった慢性期以降に検討するのがおすすめです。
痛みが引いたからと急に運動を再開する
応急処置や安静によって痛みが和らいでくると、つい「もう治った」と判断してしまいがちです。
しかし、痛みが軽減したからといって、損傷した靭帯が完全に修復されたわけではありません。
この状態で急に運動を再開すると、治りかけの組織に再び負担がかかり、その後に捻挫が再発するリスクが高くなります。
再発を繰り返すと、関節が常にぐらつく「足関節不安定症」といった後遺症につながる恐れもあります。
特に、走る、止まる、ジャンプするといった動作は捻挫をした足首にとってNGです。
運動の再開は、医師や理学療法士などの専門家の指示に従い、慎重に進めましょう。
湿布だけで治そうと安易に考える
湿布には炎症を抑え、痛みを和らげる効果があるため、捻挫の応急処置として有効な手段の一つです。
しかし、湿布はあくまで症状を緩和するための対症療法であり、損傷した靭帯そのものを治癒させるものではありません。
特に、強い痛みや腫れがある場合、靭帯の断裂や骨折を伴う重度の捻挫である可能性も考えられます。
このような状態で湿布を貼るだけで済ませて医療機関を受診しないと、適切な診断と治療の機会を逃してしまいかねません。
結果として、関節の不安定性や慢性的な痛みといった後遺症が残るリスクを高めることになるため、湿布はあくまで補助的なものと考えるのが安心です。
必要に応じて、整骨院などにも相談することが求められます。
強い痛みを放置して様子を見る
「たかが捻挫」と軽視して、強い痛みを我慢したまま放置するのは最も危険な行為です。
歩けないほどの激しい痛み、みるみるうちに腫れ上がる、患部が変色するといった症状は、単なる靭帯の軽度な損傷ではなく、靭帯の完全断裂や骨折、脱臼といった重篤な怪我のサインである可能性があります。
これらの重い怪我を放置すると、関節が正しく治らずに変形してしまったり、将来的に痛みがずっと残ったりするなど、深刻な後遺症につながりかねません。
「時間が経てば治るだろう」という安易な自己判断は禁物。
強い症状がある場合は、迷わず速やかに整形外科を受診してください。
症状が、弱くても油断せず、専門医に相談しましょう。
捻挫をしたらすぐに行うべき正しい応急処置

捻挫の症状を悪化させず、回復を早めるためには、受傷直後の数分、数時間がとても重要です。
この初期段階で行うべき適切な応急処置は「RICE処置」として知られています。
RICEとは、安静(Rest)、冷却(Icing)、圧迫(Compression)、挙上(Elevation)の4つの処置の頭文字を取ったものです。
それらの処置を迅速かつ的確に行うことで、痛みや腫れ、内出血を最小限に抑えることができ、後の治癒過程をスムーズに進めることが可能になります。
まずは安静にして患部を動かさない
捻挫をした際に最初に行うべきことは、直ちに活動を中止し、患部を動かさないようにして安静を保つことです。
これはRICE処置における「Rest(安静)」にあたります。
無理に動き続けると、損傷した靭帯や周囲の組織へのダメージが拡大し、内出血や腫れが悪化するため、スポーツ中であればすぐにプレーをやめ、安全な場所で座るか横になるなど、患部に体重がかからない楽な姿勢を取ってください。
応急処置として、添え木や厚紙、丸めた雑誌などを利用して固定すると、意図せず動いてしまうのを防ぎ、痛みを和らげる効果も期待できます。
まずは、悪化を防ぐことが先決です。
氷のうや保冷剤でしっかり冷やす
安静を確保したら、次に患部を冷やすIcing(冷却)を行います。
冷却には、血管を収縮させて内出血や腫れの広がりを抑える効果があります。
また、痛みを感じる神経の伝達を遅らせることで、鎮痛効果も期待できるのです。
やり方はシンプル。
ビニール袋に氷と少量の水を入れた氷のうや、タオルで包んだ保冷剤などを患部に当てるだけです。
なお、1回の冷却時間は15分から20分程度を目安とし、皮膚の感覚がなくなったら一度外しましょう。
その後、また痛みが戻ってきたら冷やす、というサイクルを繰り返します。
実際にこの方法でアイシングする場合は、凍傷を防ぐために、氷などを直接肌に当てないよう必ずタオル一枚を挟むと安心です。
包帯やテーピングで適度に圧迫する
冷却と並行して行うのが、患部を適度に圧迫する「Compression(圧迫)」です。
弾性包帯やテーピング、サポーターなどを用いて患部を巻くことで、内出血や腫れが周囲の組織へ過剰に広がるのを防ぎます。
また、関節を軽く固定する効果もあり、安定感が増して痛みの軽減にもつながります。
ただし、圧迫が強すぎると血行を妨げ、逆効果になるため注意が必要です。
圧迫した部分の末端(足首なら足の指)が変色したり、しびれが強くなったりした場合は、すぐに緩めなくてはいけません。
あくまで、腫れの抑制が目的であり、心地よい程度の圧迫を心がけてください。
足首を心臓より高い位置に保つ
RICE処置の最後は「Elevation(挙上)」、つまり患部を心臓よりも高い位置に上げることです。
横になる場合は、クッションや折りたたんだブランケットなどを足の下に入れ、足首が心臓の位置より高くなるように調整します。
この体勢を保つことで、重力を利用して患部に溜まった血液や余分な水分が体の中心部へと戻りやすくなります。
その結果、腫れを防ぎ、軽減させる効果が期待できるわけです。
座っている場合でも、可能であれば別の椅子や台の上に足を乗せるなどして、できるだけ患部を挙上するよう心がけてください。
特に、安静時や就寝時に意識して行いましょう。
こんな症状は要注意!すぐに病院へ行くべきサイン

適切な応急処置は捻挫の悪化を防ぐうえで重要ですが、中にはセルフケアだけでは対応できない重篤なケースも存在します。
たとえば、靭帯の完全な断裂や、骨折、脱臼などを伴っている場合、専門的な治療を受けなければ後遺症が残るリスクがあるため、注意が必要です。
「たかが捻挫」と軽視したり、自己判断で様子を見たりするのは避けるべきです。
ここからは、すぐに病院へ行くべきサインについて詳しく解説します。
激しい痛みや腫れがなかなか引かない
捻挫をした直後は強い痛みや腫れが生じるのが一般的ですが、適切なRICE処置を行えば、これらの症状は2〜3日をピークに徐々に落ち着いていきます。
しかし、時間が経過しても痛みがまったく軽減しない、あるいは日に日に増していくような場合は注意が必要です。
また、足首がパンパンに腫れあがり、内出血によって広範囲が紫色に変色している場合も、内部で損傷が起きるサインかもしれません。
それらは靭帯が完全に切れていたり、骨折を併発していたりするサイン。
我慢せずに専門医の診察を受け、正確な損傷の程度を把握してください。
足首が変な方向に曲がっている
受傷した足首を見たときに、明らかに通常とは違う形をしている、あるいは本来曲がらない方向に曲がっている場合は、極めて緊急性の高い状態です。
このような著しい変形は、単なる捻挫ではなく、脱臼や骨折を疑う必要があります。
関節を構成している骨が正しい位置からずれてしまっている可能性が高く、周辺の血管や神経まで圧迫・損傷させている危険もあります。
そのため、絶対に自分で元に戻そうとせず、患部をできるだけ動かさないように添え木などで固定したうえで、直ちに医療機関を受診しましょう。
場合によっては、救急車の要請も必要です。
患部の感覚がない、または痺れがある
足首を捻挫した後、足先や足の指にかけて感覚が鈍くなったり、触ってもよくわからなかったり、ピリピリとした痺れが続いたりする症状が現れた場合、神経に損傷が及んでいる可能性があります。
これは、怪我の衝撃で神経そのものが傷ついたか、あるいは急激な腫れによって神経が強く圧迫されていることが原因と考えられるでしょう。
神経の損傷を放置すると、麻痺や感覚異常が後遺症として残ってしまう危険性がある他、強い圧迫は血行障害を引き起こし、筋肉などが壊死するコンパートメント症候群という重篤な状態につながることもあるため、速やかな受診が大切です。
体重をまったくかけられない
捻挫の重症度を判断するうえで、患部に体重をかけられるかどうかは重要な指標の一つです。
軽度から中等度の捻挫であれば、痛みを伴いながらも、なんとか足をついて歩くことができる場合が多いです。
しかし、少しでも体重をかけようとすると激痛が走り、まったく立つことができないという状態は、重度の損傷を示唆しています。
歩けない場合、靭帯が完全に断裂して関節の支持性を失っているか、骨折している可能性が非常に高いと考えられるのではないでしょうか。
このような状態で無理に立とうとすると、損傷をさらに悪化させる恐れがあるため、それぞれ医療機関でレントゲンなどの検査を受ける必要があります。
捻挫を繰り返さないための3つの予防法

一度捻挫すると、損傷した靭帯が伸びたままになったり、関節の位置を感知する機能が低下したりして、同じ箇所を再び捻挫しやすくなることがあります。
いわゆる「捻挫癖」と呼ばれるもので、痛みが取れた後のリハビリテーションと、日頃からの予防意識が必要不可欠です。
それぞれ足首の柔軟性を高め、関節を支える筋力を強化することで、不安定になった関節を補強し、再発のリスクを大幅に減らすといった工夫が必要です。
ここでは、日常生活で取り入れやすい3つの予防法を紹介します。
運動前は入念にストレッチを行う
運動を始める前のウォーミングアップは、怪我を予防するための基本です。
特に、筋肉や腱が冷えて硬い状態で急に動くと、衝撃をうまく吸収できずに捻挫を引き起こしやすくなるため、運動前には、アキレス腱やふくらはぎの筋肉をじっくりと伸ばすストレッチが求められます。
また、椅子に座って足首をゆっくりと内外に回したり、上下に動かしたりすることで、関節の可動域を広げ、柔軟性を高めることができます。
適切なストレッチによって、足首周りの組織が動きに対して準備できるため、不意にバランスを崩した際にも靭帯にかかる負担を軽減し、怪我のリスクを下げることが可能です。
足首をサポートする靴やサポーターを活用する
自分の足に合わない靴や用途に適していない靴を履いていると、足元が不安定になり捻挫のリスクが高まります。
特に、スポーツを行う際は、その競技の特性に合った、かかとをしっかりホールドし、足首の安定性を高める機能を持つシューズを選ぶことが重要です。
また、過去に捻挫の経験があり、関節に不安を感じる場合は、サポーターやテーピングの活用も有効な予防策となるでしょう。
これらは足首の過剰な動きを制限し、関節が危険な角度に曲がるのを防いでくれます。
まずは、自分に合ったサポート具を適切に使用し、安心して活動に取り組むことができる環境が必要です。
足首周りの筋肉を鍛えるトレーニングを習慣にする
捻挫の再発予防において、最も根本的な対策は足首周りの筋力を強化することです。
筋肉は関節を安定させる天然のサポーターの役割を果たしており、靭帯の働きを補助します。
特別な器具を使わなくても、日常生活の中で手軽にできるトレーニングは数多くあります。
例えば、床に広げたタオルを足の指だけで手前にたぐり寄せる「タオルギャザー」や、かかとの上げ下ろしを繰り返す「カーフレイズ」は、足裏やふくらはぎの筋肉を効果的に鍛えることが可能な他、片足で立ってバランスを取る訓練も、関節の安定性や固有受容覚(位置感覚)を高めるのに効果的です。
まとめ

捻挫を受傷した際は、後の対処が回復を左右します。
たとえば、良かれと思って行うマッサージや、体を温める入浴、アルコールの摂取などは血行を促進し、かえって炎症や腫れを悪化させるため、避けるべきです。
また、受傷直後は、RICE処置(安静・冷却・圧迫・挙上)を基本とした応急処置を速やかに行うことが求められます。
もし、歩けないほどの激しい痛み、明らかな変形、しびれなどの症状がある場合は、単なる捻挫ではなく骨折などを伴う重症の可能性もあるため、自己判断で放置せず、速やかに医療機関を受診することが大切です。
回復後は、再発を防ぐためにストレッチや筋力トレーニングを継続してください。
もし、具体的な対処法がわからない場合は、整骨院などのプロに相談しましょう。
捻挫後の違和感が続くなら、薮下整骨院でしっかりケアしませんか?

捻挫は「安静にしていればそのうち治る」と思われがちですが、間違った対処や自己判断で動き続けてしまうと、靭帯が伸びたままになり、クセになって何度も捻挫を繰り返す原因になります。
まずは骨折や重度の損傷がないかを整形外科で確認することが大切ですが、「骨には異常なしと言われたのに痛みや不安定さが残る」「踏ん張ると怖さがある」といった場合には、整骨院での専門的なアプローチが役立ちます。
薮下整骨院では、足首まわりの靭帯・筋肉・関節の動きをチェックし、炎症が落ち着いた段階で、負担を減らしながら回復を促す施術や、再発予防のためのストレッチ・筋トレ・テーピング指導を行います。
将来のスポーツや日常生活に支障を残さないためにも、「捻挫ぐせ」を放置せず、早めにケアを始めることが重要です。
捻挫後の不安や違和感が気になる方は、ぜひ一度薮下整骨院にご相談ください。



