深呼吸と自律神経の関係性
深呼吸は自律神経と密接に関わり、医学的にもその調整効果が確認されている。自律神経には交感神経と副交感神経があり、呼吸は唯一、意識的に操作できる自律神経系の働きである。特にゆっくりとした腹式呼吸は、副交感神経を優位にし、心拍数の低下や血圧の安定、ストレス反応の抑制につながることが研究で示されている。息を吸うと交感神経がやや優位になり、吐くと副交感神経が働きやすくなるため、「吸うより吐くを長く」する呼吸法は神経バランスを整えるのに有効とされる。
深呼吸と筋肉の関係性
また、深呼吸は筋肉とも生理学的な関係が深い。呼吸に関わる横隔膜は体幹を支える主要な筋であり、その動きが弱くなると首や肩周りの補助筋が過剰に働き、肩こり・腰痛を招く。深呼吸により横隔膜が十分に上下することで胸郭が広がり、肩・首の筋緊張が減少することが分かっている。また、ゆっくりした呼吸は筋紡錘の興奮を抑え、全身の筋緊張を緩和する働きがある。これらの作用は自律神経の安定とも連動し、緊張による筋硬直や痛みの軽減につながる。
簡単にできるセルフケア
ルフケアとしては、
まず①椅子に座り背筋を軽く伸ばす。②手をお腹に当て、4秒かけて鼻から息を吸い、腹部が膨らむのを感じる。③6〜8秒かけて口からゆっくり吐き、肩や顔の力を抜く。このサイクルを5〜10回、朝と夜に行うと効果的である。
さらに、息を吐く際に肩を軽くすくめてからストンと落とす「肩リリース」や、横隔膜周囲を手のひらで軽く押さえて行う呼吸ストレッチも筋緊張の緩和に役立つ。深呼吸は手軽でありながら、自律神経と筋肉の両面に作用し、心身の安定を助けるセルフケアとして継続しやすい方法である。



